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若手物理学者の日常

日々の思いを綴る

物理/応用物理系の人が出すジャーナルの種類とランク

研究者の最も重要な仕事の1つとして、論文執筆&出版があります。世に出回っている学術誌の種類は数え始めたらキリがなく、一説には(学術誌といえるかどうか疑わしいものも含めて)数千種類の学術があると言われています。

研究者は、自分の研究成果を公開するためにこうした学術誌に論文を投稿するわけですが、どのジャーナルに出すべきかというのは非常に悩ましい問題です。

そこで、物理/応用物理系の人が出すジャーナルの一覧の表を(偏見にまみれた)ランク別でまとめてみました。(※ちなみに宇宙物理、素粒子原子核物理の専門的な学術誌は私が全く存じ上げないので除いてあります。ご了承下さい。)

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ちなみに マテリアル系に関しては既にまとめられてあります。

research-in-belgium.dreamlog.jp

特にここでは、Nature系、Science系、PR系、ACS系、Wiley系について詳しく見てみます。

1. Nature系、Science系

Nature誌、Science誌はアカデミア業界以外でも知っている人の多い世界で最も権威のある雑誌で、特にNature誌は小保○さんのST○P細胞で一層その名前が一般層に伝わったのではないか(?)と思います。Nature誌のインパクトファクターは40を越え(姉妹誌でさえ30を超えているものが多い)、Science誌も33くらいのインパクトファクターでそのブランド力では他の追随を許さない雑誌です(Science誌はScience Signalingなど3つくらいしか姉妹紙がなかったが、最近になってロボットを扱うScience RoboticsとオープンジャーナルのScience Advancesが刊行された)。生物学系の人だとここにCellという雑誌が加わります。さて、このNatureとScienceは共に最高レベルの科学雑誌でかつ週刊誌(マガジン)という点、非常に似ているのですが、NatureはNature Publishing Group(2015年5月以降の親会社は英Springer Nature、以前の親会社はMacmillan Publishers Limited)という営利目的の会社の一部門であるのに対し、Scienceは全米科学振興協会(AAAS) という非営利目的の団体が発行している商業誌点で異なっています。また、以下の通り読者数にも大きな違いがあるようです。

ネイチャーは、今から143年前の1869年に、イギリスの天文学者ノーマン・ロッキー氏によって創刊された。当初は数十ページの小冊子で、科学者仲間の会報にすぎなかった。
科学関連本の紹介や科学者同士の手紙のやりとりなど、情報交換のツールだった。
今なら、ミクシーやツィッターという役割を、イギリスの科学者の間で果たしていた。
ネイチャーの創刊号にはワイワーズの詩が載っている。

永遠に続く真の詩は
自然を礎にしなくてはならない・・・

つまり、自然に対する畏怖の念があり、自然の秘密を解明することこそが科学の使命だと考えて、誌名をネイチャーとした。
ネイチャーは、どこまでも民間の出版社が発行している週間総合科学雑誌。
個人の定期購読費は年間5万5000円程度。毎週木曜日に発行され、120ページ程度。1冊あたり約1000円余という勘定になる。
2009年のネイチャー誌の発行部数は全世界で約5万3000部。うち日本では約6000部と1割以上を占めている。
同誌は1冊を平均8人が回し読みしていると言われているから、全世界の読者は約42万人、日本人は4.6万人程度で、なかなかの頑張り。

一方、アメリカのサイエンスは、最初は発明王エジソンや電話のベルからの拠出金で1880年に雑誌を発刊したがなかなか軌道に乗らず、何回かの休刊を経て1900年に全米科学振興協会(AAAS) に合流して、協会の会員誌として安定的に発行されるようになった。
AAASの年会費が2万円程度。これは毎週金曜日の発行で、1冊あたり400円見当。ページ数は同じく120ページ前後。
ということもあって、サイエンスの定期購読者は13万人。これも回し読みがあるので、電子版を合わせた読者は100万人に達する。
つまり、読者数はサイエンスの方がネイチャーの2.5倍ということになる。

引用:科学者の芥川賞・「ネイチャー」「サイエンス」から学ぶこと: 鵜野日出男の今週の本音2011+2012

こうしたNature,Sciece誌に掲載させることは極めて難しく掲載につながる論文数は投稿された論文のうちのわずか10%ほどで、日本だけをみるとその割合は5%にも満たないそうです。またこれらの雑誌ではエディターの権限が極めて強く70-80%の論文が最初のスクリーニングでリジェクト(俗に言うエディターキック)されるそうです。

 Nature系の雑誌は、Nature本誌の下にランク別にNature姉妹紙(Nature Materials, Nature Physics, Nature Nanotechnology, Nature Photonics....)、Nature Communications誌、Scientific Reports誌が並んでいます。Nature姉妹紙は、IFは20-40まで様々でNature本誌よりもやや専門的な内容の論文を扱っていますがその最終掲載率の低さとIFの高さは本誌に負けず劣らずと言ったところで実際生物系の一部の姉妹紙は本誌よりもIFが高いこともあります。後者の2つ雑誌は共にオープンジャーナルでNature姉妹紙に落ちた論文を拾っていくという役割を果たしています。Nature communicationsの掲載率は15%, Scientific Reports誌は60%と言われています。特にNature Communicationsではその出版料が60-70万と異常に高く研究者泣かせの雑誌でもあります。また、Nature Publishing Groupはこれらの雑誌以外にも数多くの雑誌を発行しており、これからのアカデミア界を支配していく存在になるのではないかと思います。(現に一昔前では物理の業界では花形だったPhysical Review Lettersも最近ではいい論文が、Nature,  Science, Nature Physicsに奪われつつあります。 )

 

2. Physical Review

アメリカ物理学会(通称APS)が発行するPhysical Review系の雑誌は物理学を研究している人なら一度は投稿した人が多い雑誌なのではないでしょうか。特にその速報誌であるPhysical Review Letters誌は物理学専門の(非営利学術誌では最もレベルが高く、同時に最も権威があります。また、Reviews of Modern Physicsは物理の総説論文ジャーナルでは最も権威のあるジャーナルの1つになっています。

フィジカル・レビュー』(英語:Physical Review)はアメリカ物理学会が発行する学術雑誌で、物理学の専門誌としては最も権威がある。現在、Physical Review AからEまでの領域別専門誌と、物理学全領域を扱う速報誌Physical Review Lettersに分かれており、特にPhysical Review Lettersに論文を載せることは物理学者の一つの目標となっている。 

 引用: フィジカル・レビュー - Wikipedia

実際に過去にノーベル賞を受賞の基となった研究やノーベル賞候補の研究、さらには最近発見された重力波の検出の研究もPhysical Review系の雑誌に載っています。

BCS理論

J. Bardeen, L. N. Cooper, and J. R. Schrieffer, "Theory of superconductivity," Phys. Rev. 108, 1175-1204 (1957).

電弱統一理論

W. S. Weinberg, "A model of leptons," Phys. Rev. Lett. 19, 1264-1266 (1967).

量子ホール効果

K, Klitzing, G. Dorda, M. Pepper, "New method for high-accuracy determination of the fine-structure constant based on quantized Hall resistance" Phys. Rev. Lett. 45, 494-497 (1980).

ブラックホール重力波の検出

B. P. Abbott et al. "Observation of Gravitational Waves from a Binary Black Hole Merger" Phys. Rev. Lett. 116, 061102 (2016).

3. ACS

アメリカ化学会(通称ACS)が発行する化学専門誌で、化学版Physical Reviewといったところでしょうか。特に下記のwikipediaにもあるようにJournal of the American Chemical Society(通称JACS)と呼ばれる雑誌は、時としてNatureやScienceよりもインパクトのある研究が載る雑誌で、化学専門学術誌では最も権威があります。物理/応用物理業界の人は、この系列のナノテクのロジー専門誌である、Nano LettersやACS Nanoに投稿することがあります。この2つの雑誌はACS系列の雑誌では(Chemical Reviewsという総説専門誌を除くと)Top2であり(IF~12-13)、かなり権威のある雑誌となっています。分野にもよりますが、結果重視の時はこちらの系統の雑誌、ディスカッション重視の時はPhysical Review系に出すのではないでしょうか。

 出版部門では、39誌の雑誌(多くが各分野のトップジャーナルとなっている)と、数シリーズの書籍を発行している。中でも最も古いのは1879年に発行を開始した米国化学会誌(Journal of the American Chemical Society, JACS)であり、これは現在発行されている全化学系雑誌の中でもトップクラスのインパクトファクターと、極めて高い権威を有する雑誌である。

 引用:アメリカ化学会 - Wikipedia

4. Wiley系

Wileyは国際的な科学、技術、医療などの学術誌を扱う出版社です。物理系、あるいは材料系の人は、Advanced Materials, Advanced Functional Materialsなどに出すことが多いのではないでしょうか。これらの雑誌は応用系の研究が中心のためかIFが結構高めになっています。

Wiley is the international scientific, technical, medical, and scholarly publishing business of John Wiley & Sons, with strengths in every major academic and professional field and partnerships with many of the world's leading societies. For more information, please visit www.wiley.com.

Wiley Online Library hosts the world's broadest and deepest multidisciplinary collection of online resources covering life, health and physical sciences, social science, and the humanities. It delivers seamless integrated access to over 6 million articles from over 1500 journals, over 18,000 online books, and hundreds of reference works, laboratory protocols and databases.


引用:http://olabout.wiley.com/WileyCDA/Section/id-390001.html